ベニスのフリッピングスタイル2態

2月のクラシックで撮影した他の動画をアゲておこう。
公式プラのスキート・リースと、試合2日目のトミー・ビッフルだ。
『Basser』を読んだ方ならすでに知っているように、ベニスでのフリッピングパターンが2人の戦略だった。

「ベニス」は、ミシシッピ川河口部の最下流を指すエリア。
ニューオリンズからボートで向かうには、サルバドール湖>バラタリア湾を抜ける最短ルートで片道2時間を要する。

Venice Map

マップからも分かる通り、ここだけでも相当に広いエリアだが、この半島状の陸地のように見える部分はほぼ全域が陸地とも水域ともつかぬ湿地帯(英語で言うところのswamp)である。
背高のリーズに囲まれた水路と沼地の大迷路だ。
水深は深くても5〜6ft。
バスが付くようなカバーはグラスとリーズしか存在しないので、必然的に釣り方も限定される。
ベニスが「flippers' paradise(フリッパーたちの天国)」と呼ばれる所以である。

では、フリッパーたちがベニスでどのようなフリッピングをしているかと言うと、そのスタイルは実は結構人それぞれだったりする。
2月のクラシックで自分が同船したスキート・リースとトミー・ビッフルは、今回のクラシックでベニスを釣った約20名に及ぶ選手たちのたった2人にすぎないが、それでも、ベニスにおけるフリッピングスタイルの幅と奥深さを知る上で貴重な実例だったと言える。


上の動画は、試合前々日に行われた公式プラ中のスキート・リース。
ベニス内に無数に存在するキャナルのうちの数本を流している。
キャナルの長さはおよそ数百m。
それらを端から端まで撃っていくわけではなく、水深が深めのデッドエンド部や、カレントが効きやすいインターセクションなどを重点的に釣る。
そうしたキーストレッチだけを撃って、ゴソッと固まっているバスを探していく。
往復の移動で4時間以上を失うので、時間との勝負という側面もある。
動画内のスキートがかなり大雑把な流し方をしているように見えるのは、この日があくまでもプラクティスであって、エリアの絞り込みを目的としていたからだ。
試合中はキーストレッチだけをもっとじっくり釣っていたはずである。
使用ベイトはバークレー・ハボック・ピットボス(Berkley Havoc Pit Boss 4in)のブラック&ブルー。

Havoc Pit Boss

ここでのスキートの釣り方の特徴は、リーズのエッジに落として、2〜3回のバンピングですぐに次のフリップへ移っていく効率重視のスタイルだ。
グラス類が絡んでいるわけではないので、バスがいれば即バイトという釣り。
流れるようなスキートのフリッピングが美しい。
ブレイドラインがガイドを擦る音にゾクゾクするのは自分だけではないだろう。

スキートというと、巻きモノからフィネスまで幅広くこなすバーサタイルアングラーという印象が強いが、彼のベースは地元カリフォルニアデルタ仕込みのフリッピングである。
ただし、いつでもどこでもフリップするわけではないので、フリッピングパターンで上位に入ってくるケースは意外に少ない。

そこへいくと、トミー・ビッフルはまさしくいつでもどこでもシャローさえあればフリップする筋金入りのフリッパーだ。
スモールマウスで有名な北部のレイクシャンプレイン(NY州とVT州の州境)やセントクレア(ミシガン州)でさえ、バックウォーターでのラージマウスパターンを追いかける選手である。
そのビッフルがルイジアナデルタでフリップしないはずがないわけで、エリアのほうもベニスを選ばないわけがない。
「どこで、どんな釣りをしたの?」という質問は、今回のビッフルに限っては愚問だった。


上の動画は、試合2日目に同船した際に撮影したもの。
キャナルランガンしたスキートと異なり、ビッフルは広大なオープンウォーターの一角だけをじっくりと釣り込んだ。
リーズパッチが点在するそのエリアは水深およそ3〜4ft。
リーズの周囲がびっしりとグラスで縁取られていたのは、ここがミシシッピ本流の濁りとメキシコ湾の海水からプロテクトされたエリアであることを示していた。

ビッフルのフリッピングパターンはそうしたリーズ際のグラスマットをターゲットにしたものだったが、特徴的だったのは、ワンスポットに掛ける時間だった。
上の動画でも、フリップ後、グラスマットにベイトをすり抜けさせた後、かなり長い時間、ボトムで誘っているのが分かるはずだ。
そして、ここぞといいうキースポットに対しては、わざわざロッドを持ち替えて、別のベイト(動画内で使ったのはリザード)でフォローしてさえいる。
ビッフルがメインに使っていたベイトは、自身がデザインしたジーンラルー・ビッフルバグ(Gene Larew Biffle Bug 4.25in)。色はブラック&サファイヤ。

Bifflebug blackSaffire

ここ数年のトレンドであるいわゆるスイートビーバー系にあたるが、ビッフルバグはボディーがチューブになっている。
ビッフルは中に大きめのガラスラトルを入れていた。

もうひとつ、これは『Basser』のほうにも書いたことだが、ビッフルはブレイドラインではなく、フロロカーボン(サンライン・シューター25lbs)を使っていた。
アメリカのプロツアーではフリッピングブレイドライン(日本でいうPE)を合わせるのが一般的であるが、ここ最近はビッフルをはじめとする一部のフリッパーたちの間でフロロへの切り替えが見られる。
このあたりについては、いずれまた詳しく書いてみたい。